「今年も去年も何もできないし、楽だからこの役を引き受けてくれないか?」
「どうせ何にもできないし、いいよ。楽だもんね。」
こんなやる気のない役替わりの言葉をよく聞くまでになってしまった。
先日、群馬の風物詩である「どんど焼き」が早朝に行われた。準備は地元の祇園祭を取り仕切る若手の世話人がこなす。コロナ禍でも工夫を凝らし休むことなく継続している。しかし、肝心の祇園祭は2年間中止になったままだ。世話人は4人いる。中でも中心となるのは「若頭」と言われる人物だ。若頭が纏う法被の襟裏には歴代の若頭の名前が刺繍されている。私はこの祭りにおける町内の責任者である「頭」を預かっている。
「頭。何にもしないで、次に渡す訳にはいかないです。歴代の思いをしっかりと繋ぐために、再開するまで俺たち4人にやらせてもらえませんか?」
私は無言で彼の肩をたたいた。かける言葉がなかった訳ではない。溢れそうなものをこらえる事しかできなかった。
人のやる気をも削いでいる状況の中で、必死に抵抗する若者を見習いたい。