隣には母娘が座っていた。途中から乗車した女性が前の席に座るや否や、二席を「ドーン!ドーン!」と勢いよく倒した。私と少女の前の席だった。テーブルに置いてあった飲み物が倒れそうになった。白髪交じりのポニーテールに黒地にピンクの水玉のリボンの頭を揺らし、背中を背もたれにガンガンと押し付けてくる。足元が少し狭くなったので、母親が子供の背もたれを倒そうとした時、「ママ、そーっと倒すんだよ」と。確実に前の女性に聞こえる声だった。女性は、後ろの私達に視線を向けることなく、ばつが悪そうにその席を離れていった。
その後、すぐに大きな荷物をいくつも抱えた若い女性がその席に座った。「背もたれ起こしてもいいですか?」と話しかけられた。大学の卒業式を終えたところで、荷物が沢山になってしまったそうだ。荷物のひとつに桜の枝が入った花束があった。「これが一番持ちづらいので、もらって下さい。これから引っ越しなので」と花束を渡された。
プラマイゼロかと思ったが、確実にプラスが強い電車移動でした。