ぐんび組合報300号を記念し、これまでの組合報を使用して「300」の文字を作りました。保存してあった過去の資料に目を通すと、そこにはその時代の理事長の思いや組合の伝えたいことが記されていました。そこで今回は「理事長の部屋」を拡大し、理事長の思いをよりフランクに、より率直にお伝えするべく、会議と公務のお忙しい合間にお時間を頂いて、お話を伺いました。
この熱い想いが伝われば幸いです。
●まずはいつもの理事長の部屋から●
――これまでの「理事長の部屋」はおもしろ話と言うか、人情味溢れるネタをご披露いただいておりました。ご本人曰く“社会派コラム”だそうですが、堅苦しい話はあえて遠慮なくボツにさせていただいております(笑)幸いなことにネタには事欠きませんよね。
町田:幸いなことに(笑)
そういえば連合会の新年会で東京に行った時の話なんですが。朝出かける際にカミさんが「コート着ていくんでしょ」って言うのでそれに気をとられてて、バスに乗ってやれやれ一息つこうとコートを脱いだら、まさかのシャツ姿…。コートに気を取られてたら、上着着るの忘れちゃってたっていう…。
とりあえず新宿に着いたらZAR○で間に合わせようと思って行ったら、いつの間にか閉店していて、もぬけの殻。
時間に余裕がなくなる中、急いでユニク○に行ってジャケットみつけて。「すぐに着ます」ってレジのところでタグ切ってもらって、猛ダッシュで会場のある渋谷へ移動。
間に合ったと思って、タバコを買おうとコンビニに寄ったら、ポケットの中に、財布が…ない…
買ったばかりの上着のポケットに、財布が…ない…。
やばいと思って電話してみたところ、幸い財布はレジの方が気づいてくれて、無事保管されているとのことで、ホッと一安心。
ただ取りに行く時間がないので、そのまま新年会に出席したら、各県の理事長たちに二次会に誘われ、一文無しで東京の街を飲み歩くことに…。
途方に暮れる中、たまたま同じ日に(中之条支部の)菊地さんが代々木で講習会だったのを思い出して。「オレオレ、こういうわけで金貸して」って電話をかけて。新手のオレオレ詐欺みたいな要求にも関わらず、菊地君に飲み代を届けてもらって、事なきを得ましたが…
の後しばらく出かけるときには、「コート着た?」じゃなく、「上着着た?」って確認されるようになりました。
――きっちりオチまでつけていただいて。「理事長の部屋」にふさわしいネタをありがとうございました(笑)
●300号に至るまでつなげた思い●
――組合報は年間5回発行されているので、300号に至るまでには、組合創立と同じ60年の歴史があるわけですね。絶やすことなく300号までつなげるには、これまで大変なご苦労があったと思われます。町田理事長も理事就任当初から編集に携わっていましたよね。
町田:わたしは12年編集をやっていたので、全部で60号くらい作っていますね。
――12年も…。引き継がれた当初は、編集の仕方も今とは異なっていました?
町田:昔は手書きのゲラがあって、そこに記事や写真の現物を切り取って入れるというアナログな作業でした。
それから自分でもパソコンを使うようになり、試行錯誤を重ねました。
幸い先輩方の積み重ねてこられた組合報があったので、よく見て参考にしました。さらに加えて、当時上毛新聞の記者をされていた経験を持つ理事さんがいたので、プロ目線での編集の仕方を手取り足取り教えていただくことができました。それを自分なりにアレンジしていったという感じですかねぇ。
――わたしたちが編集の仕事を引き継ぐ際、町田理事長作の「サルでもわかる編集」という手引きを頂きましたよね(笑)理事長が編集作業で心掛けていたことは、どんなことでしたか?
町田:教わったことは「公平・公正」な記事の書き方なんですが、作っていく中で、この組合報の基本は啓発新聞なので、組合員さんの意識を組合に向けるための広報誌でなければならないのだと気づくわけですよ。
きっと歴代の編集委員長さんたちも同じだと思います。節回しを変えてはいるけれども、書き手の思いをより伝えたいと願うので、それぞれ個性が生まれているんだと思います。
――過去の組合報を読むと、○○節という個性が如実に表れていますが、そもそも広報誌で個性って出してよいものなんですか?
町田:出していいと思いますよ。むしろ強い想いを持って書くから、自然に個性が出るんだと思います。
書き手が強い想いを持っていなければ、読む側に伝わらないでしょう。だから自分も記事を書くときには、「町田節」でした。
●300号の間に変わったものと変わらないもの●
――作り手側としては、読んだ感想とかいただけると、励みになるのですが。組合報の反応とか、いかがですか?
町田:ありがたいことに、「理事長の部屋」とか楽しみにしてますと言っていただいています(笑)組合報は群馬県内のみならず、ほかの県にもお送りしているのですが、フルカラー発行ってうちぐらいなので、いい紙面だとお褒めの言葉も頂いていますよ
――フルカラーに変更になったのは、作る側としては楽しくなりました。拙い言葉を連ねるよりも、写真1枚のほうが伝わることもありますし。写真班も何百枚と撮る中からのベストショットを選べるわけですし
町田:写真は多用しているし、デジタルなので加工も可能になっている。紙面の在り方は変わってきているし、これからも変化するでしょう。でも、やっぱり伝えたい本質の部分は同じなんですよね。自分が編集していた時に他の方の書いた原稿に手を加えなくてはならないことがあって。その時に書いた人の伝えたい気持なんかを考えながら書き直すという作業に苦労しました。
これから編集をする人には、やはり書いた人の気持ちの先にあるものを考えながら作ってほしい、と思ってます。
何々がありました、何々があります、っていう広報誌だけだったら誰でも書けるわけなんだけれども、そうじゃなくて、何のためにやるのか、何を求めているのかまで言ってあげるのが啓発新聞としてのこれからなので、頑張ってください。
――「未来を伝え続ける」ですからね。なるべく努めます。
町田:時代の流れでSNSの利用は必要になると思います。でもそれはあくまでも予備的と言うか補完するツールであって、メインではないんですね。速さが利点のSNSと丁寧なつくりの組合報と考えると、これから先も紙の媒体はなくならないでしょう。両方のいい点を活かして、「組合の今・未来」を伝えていきたいと思っています。紙面を工夫しながら、400号に繋げるよう、積み重ねていきましょう
●60周年を迎えて これから伝えていきたいこと●
――理事長は組合創立60周年の節目の年を迎えた際、総会のあいさつで「消費者のための組合」と述べられていました。これまでは「美容師法を守る」ことが中心にあったような印象ですが
町田:もちろん組合の最大の目的は、「美容師法を守る」ことにあります。指導センターのパンフレットにも、組合の成り立ちがわかりやすく書かれています。じゃあなんで美容師免許や業務形態を守るのかと言うと、その先は消費者の安心・安全を守るため、なんですよ。究極的には「社会のため」と言えるでしょう。これは昔から変わらないんだけど、伝えきれていなかったのかもしれない
――松本イズムを継承しつつ、さらに深掘りしていく、という感じですか?
町田: そうですね。基本の部分は変わらない。でものびしろはまだある。だから創立60周年を迎えた時に、「まだ道半ば」という言葉が自然に出たんでしょう。常に「これで良し」ではなく「まだまだもっと良くなる」という想いをもって組織運営に当たっているので、そのあたりの部分を組合報を通じて皆さんにお伝えできればいいなと思っています。
――――今年の新年会では「サロンの繁栄を考える組合」という理念を掲げられました。これに込められた思いとは?
町田:組合がすべきことっていろいろあると思うんです。そしてそれには「組織の力」が必要になる。だけど基本に立ち返ってみると、個々のサロンの力が弱くなれば、当然組織の力が強くなるわけがない。「サロンの繁栄を考える」というキャッチコピーだけ独り歩きをしてしまうと誤解を生みかねないのですが、組合がいろいろやるべきことの中の一つとして考えているということを、組合員さんにご理解いただきたいです。
――具体的にはどのような事業をお考えですか?
町田: そこは難しいところです(苦笑)
例えば昨年の記念式典で行った磯崎康一先生の「一人サロン繁栄のコツ」の講演なんて、参考にすべきところがたくさんあり、いい勉強になったと思います。
これからも情報を提供したり、講習会を開催したりしていきます。ただ、「こんな情報が欲しいんだよ」とか、「こんな勉強がしたいんだけど」といった要望を、組合員さんから声を挙げていただけるとありがたいですね。お互い助け合いながら、いい意味で組合を上手に利用していただきたいと思っています。
――組織強化のために組合未加入店にもアプローチを行っていますが、反応はいかがですか?
町田:先日組合未加入の方といろいろ話をする機会があったんですが、美賠責も違う保険に入っているし、組合の持っている技術力の高さは認めるけれども、自分の求めているものとは異なるので、講習会も独自ルートで間に合っていると言う。通常メリットと言われている部分に、彼は全く興味を示さなかったんです。
しかし美容業界についてこれほど深く話をする機会がなかったので、それだけでも魅力があると言ってもらえました。
どこに魅力を感じるかは、人それぞれかもしれません。諦めずに地道に対話を続けます。
――「横のつながり」とか、「経営者同士としての話し合い」とか、若手の組合員さんからもよく耳にする要望です
町田:組合に求めているものが時代とともに変化しているのだということを、組合員さんにもご理解いただきながら運営を進めていきたいと思っています。「接客・おもてなし力向上セミナー」の松岡先生の話にもありました通り、時代によって働き方に求めるものは変化しています。例えば高度経済成長の時代には劣悪な職場環境や労働時間の長さが顕著であったため、肉体的に健康であることが職場に求められました。その環境が改善された現代では、職場の人間関係であったり、働き甲斐であったりといった、精神的な健康が求められています。組合も同様に、出発点は料金や休日といった統一であったけれども、60年経った今ではもっと違う面にシフトしていかなければ、時代に対応できないのかなぁと思います。そして我々組合が活動している先には、常に一般のお客様のことを念頭に置いているのだと、徐々に伝えていけたらと考えています。
――それが『美容技術アカデミー』の構想につながるわけですね
町田:そうですね。組合の持つ技術力の高さを、組合の中にとどめておくのはもったいない。広く一般消費者の目に留まるように周知して、できるなら消費者側から組合未加入店に働きかけてもらえるような、そんな理想を持っています
――いろいろな企画を打ち出していますが、最後に組合員さんにお伝えしたいことはありますか?
町田:わたしが松本前理事長からこの職を継いで1期が経過しました。その間、全国大会招致の話に始まり、様々な事業を展開しています。もちろん結果がすぐに出るわけではなく、組合の抱えている問題が解消されてはいないでしょう。だからといって手をこまねいている暇はありません。理事会でも知恵を出し合い、前向きに未来を考えています。組合員の皆様お一人お一人がこの組合を支えているのだと実感していただき、ともに夢や理想を語り合って、実現に向かいたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします!